写真はH.D.ショベルヘッドのシリンダー、社外新品です。
精度が信頼できないので、いきなり0.005OVSでボーリングするとの事。表面だけサラッと削ってみました。
非常に複雑怪奇な当たりになっています。垂直度、円筒度、真円度がデタラメなのが見てわかります。
もちろんこの後規定寸法まで加工すれば全てきれいに取りきれましたが。Stdで組んでいればおそらくかなりの距離のナラシが必要だったかと。
割と良く有る質問「○○社の△△を組もうと思うのですが、アレってどうなんですかねぇ」
つまりは精度とか材質、耐久性、実際組んだ評判などを聞かれている訳だが、
答えは大体決まっていて、「一応測定して、必要であればキチッと加工修正してから組んだ方が良い」
つまりは一概に○○社のは良くて□□社のは劣るとかって事は言えなくて、ほとんど無名のメーカーの物で全く問題なかったり、逆に有名ドコロのブランドでおかしなのが混ざってたり等。
エンジン部品は新品を測らずに組むのはギャンブルですね。しかも当たってトントンで外れたら大ヤケドです。
次、トライアンフ650のシリンダー新品。
ベース面に対してボアが傾いている場合がある。
計測して斜めであれば、シリンダーボアを基準に垂直になるようベース面を面研する訳だが、最大で左右方向に0.3ミリ狂っていた事例がある。
それでもまだ序の口で、ひどいのは左右のボアが平行でない(ハの字になっている)、いきなりOVSでボーリングが必用な例も。
ボアが斜めでなくても、やはりそのまま組む事は出来ない。ほぼ100%クリアランスが規定値を大幅に下回っている為、ホーニング、状況によっては僅少のボーリングを行って拡大する必要がある。
こうなるともはや無加工の品物を売ってもらいたくなるレベル
今回の品は垂直度はOK。ダミーヘッド及ダミーベース締付後ホーニング加工
次、H.D.サイドバルブシリンダー
このようなニッチな車種でも社外新品部品の供給がある点、古い工業製品に対する社会の認識の違い、文化の懐の深さといったものを感じてしまいます。
それはさておき、計測するとシリンダーボアがベース面に対し上下端で0.15ミリほど斜めになっています。
これを製品として出荷する点、別の意味で工業製品に対する認識の違いといったものを感じずにはおれません。
ベース面を修正面研。ダミーヘッド及びダミーベース締付後ホーニング加工
ここまで読んだ方「やっぱり社外品はイマイチなんだ」という感想を持たれた方も多いかと思いますが、
それは大間違いです。
写真はH.D.エヴォリューションのシリンダー、純正新品です。
写真のシリンダーゲージはピストン寸法を0に合わせてありますが、思いっきり楕円で、狭い所はクリアランス0。ピストンを入れても引っ掛かって落ちません。
これはこの個体のみではなく、Evoに関して言えば今まで見てきた純正新品は100%全てこれと似たり寄ったりの状況です。
ダミーヘッド及びダミーベース締付後ホーニング加工
新品シリンダーについていくつか例をあげましたが、
ここに紹介したのはあくまでも「そのまま組むにはアレなものをとりあえず組めるようにする」事例です。
本当にお勧めしたいのは、
「しばらく乗って熱が入り歪みが出たシリンダーを、キッチリと精度を出して再加工することにより、その後の歪みが少なく、良い結果が得られる」
という事。
シリンダーボーリングを、「壊れたときの修理」ではなく、広義のメンテナンス、そのエンジンを長持ちさせるために必須の作業だと認識していただきたいと思います。
明日10/22は所用により臨時休業し、代わりに10/23(日)は昼より工場へ出ています。
22時19分本日の業務終了。以上。
コメントをお書きください
とあるプライベーター (土曜日, 22 10月 2011 00:48)
当方英国車専門で米国車の事はとんと疎いのですが米国でも同じような状況でちょっと安心しましたw。
思うに再生産シリンダーは相当テキトウな加工は勿論時間なましや熱なましのような歪に対する処理をしていない為にユーザーの手に渡る頃には良い感じに歪んでるのでは、と思ったりします。
こういったしょうもないシリンダーを作り続けてクレームも入っているはずですが現在でもしょうもない状況であるのが悪い意味での古い工業製品に対する社会の認識の違いなのでしょうね。
しかしそのおかげまともな職人さんに活躍の場が与えられる、と考えると本当に悪いのかどうか解らなくなってきますw。
てきとう (月曜日, 31 10月 2011 23:41)
大変、勉強になりました。
何かあるときはよろしくお願い致します。